デザインは、絵を描くことだけじゃない。
――「描く」よりも、「考える」。
「デザイナー」と聞くと、どんな人を想像するでしょうか。
紙に向かって鉛筆を走らせる人。
美しい絵を描く人。
IllustratorやPhotoshopを巧みに操る人。
ファッションなら、服のデザイン画を描く人。
もちろん、それもデザイナーの一つの姿だと思います。
でも、私にとってのデザインは、それだけではありません。
むしろ、
デザインは「描くこと」よりも、その前にある「考えること」のほうが重要だと思っています。
■ 私は、絵を描くことからデザインを始めない。
私は、いわゆる「絵が上手な人」ではありません。
手で美しい絵を描いて、それをそのまま作品にする。
そういうタイプのデザイナーではありません。
私はPCを使って、頭の中にあるイメージを少しずつ形にしていきます。
文字を配置する。
形を組み合わせる。
線を引く。
画像を加工する。
色を変える。
バランスを調整する。
何度も試して、何度もやり直す。
そして、
「これだ。」
と思えるところまで持っていく。
だから私にとってデザインとは、
手の技術だけではなく、頭の中にあるイメージをどう現実に変換するかという作業
なのです。
■ デザインの始まりは「疑問」。
私が何かをデザインするとき、最初から「完成したもの」を考えているとは限りません。
むしろ、最初にあるのは疑問です。
「これって、こうしたら面白くないか?」
「普通はこうだけど、逆にしたらどうだろう?」
「この二つを組み合わせたらどうなる?」
「この意味を、別の形で表現できないか?」
そんな小さな疑問から、デザインが始まります。
例えば、スニーカーなら、
「スニーカーをデザインしよう。」
だけでは終わりません。
なぜその形なのか。
誰が履くのか。
どんな場所で履くのか。
履いた人にどう見えてほしいのか。
その靴を見た人に、どんな印象を与えたいのか。
そこまで考えて、初めてデザインが始まります。
■ 「かっこいい」だけでは足りない。
デザインをつくるとき、
「かっこいいものをつくりたい。」
という気持ちは当然あります。
でも、
「かっこいい」だけではブランドにならない。
私はそう考えています。
なぜかっこいいのか。
なぜこの形なのか。
なぜこの色なのか。
なぜこの文字なのか。
なぜこの場所に配置するのか。
そこに理由がある。
そして、その理由が積み重なったときに、デザインに「意味」が生まれる。
だから私は、
意味のあるデザイン
をつくりたいと思っています。
■ デザインは「引き算」でもある。
デザインというと、何かを足していく作業だと思われがちです。
ロゴを入れる。
文字を入れる。
色を入れる。
装飾を入れる。
写真を入れる。
でも、実際には逆のことも多い。
「何を入れないか。」
を決めることもデザインです。
一つの作品にアイデアを詰め込みすぎると、何を伝えたいのか分からなくなる。
だから、
これは必要なのか。
これは本当に意味があるのか。
この線は残すべきなのか。
この文字は必要なのか。
そうやって削っていく。
最後に残ったものが、本当に伝えたいものになる。
私は、この「引き算」をとても大切にしています。
■ 「線」一本にも意味を持たせる。
私のデザインでは、「線」が一つの重要な要素になることがあります。
一本の線。
たったそれだけでも、表現できるものはあります。
強さ。
柔らかさ。
スピード。
つながり。
人。
文字。
感情。
そして、時には「平和」というような大きなテーマまで。
一本の線をどう動かすか。
どこから始まり、どこへ向かうのか。
どこで交差するのか。
どこで終わるのか。
それだけでも、一つの物語になります。
だから、
シンプル=簡単
ではありません。
むしろ、シンプルにするほど、一つひとつの要素に意味が必要になる。
私はそう考えています。
■ デザインは「組み合わせる」ことでもある。
世の中には、すでにたくさんのものがあります。
ファッション。
音楽。
アート。
スポーツ。
映画。
ゲーム。
テクノロジー。
日本文化。
海外文化。
それぞれ単独で存在しているものを、別の組み合わせにしてみる。
すると、今まで見たことのないものが生まれることがあります。
私は、この「組み合わせ」が好きです。
例えば、
ファッション × アート
スニーカー × 日本文化
キャラクター × ファッション
デザイン × テクノロジー
ファッション × Web3
ジャンルの境界を越えることで、新しい表現が生まれる。
これも私にとって、デザインの面白さです。
■ デザインは「伝える」ためにある。
どれだけ美しいものをつくっても、
誰にも意味が伝わらなければ、
それはデザインとして十分ではないかもしれません。
もちろん、意味を明確に説明しなくても成立するデザインはあります。
「なんとなく好き。」
それも立派な感覚です。
でも、そこにさらに、
「このデザインには、こういう意味があるんだ。」
と知ってもらえたら、作品はもう一段深くなる。
だから私は、
見た瞬間のインパクト
と
知った後に残る意味
の両方を大切にしたいと思っています。
■ デザイナーは「翻訳者」なのかもしれない。
頭の中にあるアイデアは、そのままでは他の人には見えません。
自分だけが見えている。
そこで、それを
色にする。
形にする。
文字にする。
写真にする。
映像にする。
商品にする。
WEBサイトにする。
ブランドにする。
つまりデザイナーは、
頭の中にあるものを、他の人が理解できる形へ翻訳する仕事
なのかもしれません。
私はこの考え方が、自分のデザインにとても近いと思っています。
■ PCは「道具」でしかない。
私はPCを使ってデザインします。
でも、PCそのものがデザインを生み出してくれるわけではありません。
どれだけ高性能なソフトを使っても、
何をつくりたいのか。
何を伝えたいのか。
誰に届けたいのか。
それがなければ、ただの操作になります。
だから、
道具よりも、アイデア。
技術よりも、発想。
もちろん技術は必要です。
でも、
「技術があるからデザインできる」
のではなく、
「伝えたいものがあるから、技術を使う。」
私はそう考えています。
■ AI時代だからこそ、人間の「考える力」が重要になる。
今、AIによってデザインを取り巻く環境は大きく変わっています。
画像を生成する。
アイデアを出す。
文章を書く。
写真を加工する。
映像をつくる。
以前なら何時間もかかっていたことが、短時間でできるようになっています。
私は、この変化を恐れるよりも、積極的に使っていきたいと思っています。
AIは、新しい道具です。
でも、
「何をつくるのか」
を決めるのは、やはり人間です。
AIに「かっこいいものをつくって」と頼むことはできる。
しかし、
「なぜ、これをつくるのか。」
まで考えることは、自分自身の役割だと思っています。
だからこそ、これからのデザイナーには、
考える力。
選ぶ力。
編集する力。
そして、
自分自身の世界観を持つこと。
が、より重要になっていくのではないかと思います。
■ 「上手い」と「面白い」は違う。
これは、デザインを始めた頃から感じていたことです。
技術的に上手な作品が、必ずしも一番人の心に残るとは限らない。
逆に、
少し不器用でも、
少し変わっていても、
「なんだこれは?」
と思わせる作品が、ずっと記憶に残ることがあります。
私は、
「上手いデザイン」よりも「面白いデザイン」をつくりたい。
そう思っています。
もちろん、クオリティは必要です。
でも、完成度だけを追い求めて、
「どこかで見たことがあるもの」
になってしまったら面白くない。
少しくらい、
「変だな。」
と思われてもいい。
その「変」が、
「面白い。」
に変わる瞬間をつくりたい。
■ 独創性は「ゼロから生まれる」のではない。
#002でも書きましたが、私は「独創性」という言葉を大切にしています。
ただ、独創性とは、
「誰も見たことがないものを、完全にゼロから生み出すこと」
だけではないと思っています。
世の中にあるものを知る。
自分の経験を重ねる。
そこから、自分なりの視点で組み合わせる。
そして、今までとは違う意味を与える。
その結果として、
「自分にしかつくれないもの」
が生まれる。
だから、デザインをする人間にとって、
「見ること」
も重要な仕事です。
いろいろなものを見る。
いろいろな人を見る。
いろいろな文化を見る。
いろいろな時代を見る。
そして、
「なぜ、これは人の心を動かすのだろう?」
と考える。
その積み重ねが、自分の引き出しになっていく。
■ デザインは人生にも似ている。
少し大げさかもしれません。
でも、私はデザインと人生には似ているところがあると思っています。
人生も、
何を残すのか。
何を捨てるのか。
誰と出会うのか。
何を選ぶのか。
どこへ進むのか。
その一つひとつの選択で形が変わっていきます。
デザインも同じです。
一つの線。
一つの色。
一つの文字。
一つの選択。
その積み重ねで、一つの作品になる。
そして人生もまた、
一つひとつの経験が積み重なって、
「自分」という作品
になっていく。
だから私は、
デザインをすることは、
自分自身をデザインすることにも少し似ていると思っています。
■ これからも「考える」。
これから先も、私はデザインを続けていきます。
VIVIANT WOLF。
LINO MANON。
RAVIT THREE SEVEN。
KIWAME ZYOSHI。
XCROSS DASH JAPAN。
そして、これから生まれる新しいプロジェクト。
そのすべてで、
「何をつくるか」
だけではなく、
「なぜ、つくるのか。」
を考えていきたい。
デザインソフトを開く前に考える。
線を引く前に考える。
商品をつくる前に考える。
ブランドを立ち上げる前に考える。
そして、
考えたものを現実にする。
■ 最後に。
私は、デザインが上手だからデザイナーなのではないと思っています。
「これを形にしたい。」
という気持ちがある。
「こんなものがあったら面白い。」
と考える。
「まだ誰もやっていないなら、やってみよう。」
と思う。
そして、
頭の中にあるものを、
一つずつ現実にしていく。
その繰り返しをしているから、
私は自分をデザイナーと呼んでいるのだと思います。
だから、
デザインとは、描くことだけではない。
デザインとは、考えること。
そして、
考えたものを、現実の世界へ届けること。
それが、私にとってのデザインです。
これからも、
考えて。
つくって。
失敗して。
また考えて。
そして、まだ見たことのないものを形にしていきたいと思います。
KENJI FUKUMOTO
Designer / Creative Director
XCROSS DASH JAPAN
Design the future.
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